【二人】

12/42
17903人が本棚に入れています
本棚に追加
/300ページ
「どんな名前だった?私は知っているはずなのに、思い出せない」 「どこの国で作られたんだ?それが分かれば大分絞られる」 「分からない。私が覚えているのは、マスターの言葉」 バニラはベンチから立ち上がって、長い髪を揺らした。 「彼を守ること。何があっても、彼の味方でいること」 「それだけ?」 「それだけ。私はそれを守り続けてきた。これは唯一の私の意志」 言葉が途切れた。 言いたいことは全て言ったらしい。 「僕に近付いたのは、どうして?まさか、本当にソフトクリームだけが目的じゃないはず」 「二通り考えてた。一つは話すこと。私たちについて話すこと」 「もう一つは?」 「……考え中」 言っていることがめちゃくちゃだと言おうとしたら、バニラは「内容じゃなくて、やるかやらないか」と付け足した。 「やろうと思えば今すぐできる。だから、目的が二通りあるのではなく、二つあるの方が語弊はない。もう一つの目的は――あなたを殺すこと」 彼女の言いたいことは分かっていたはずなのに、僕も大概狂っている。 こんな言葉を聞いても、苦笑程度の動揺で抑えられるのだから。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!