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「どんな名前だった?私は知っているはずなのに、思い出せない」
「どこの国で作られたんだ?それが分かれば大分絞られる」
「分からない。私が覚えているのは、マスターの言葉」
バニラはベンチから立ち上がって、長い髪を揺らした。
「彼を守ること。何があっても、彼の味方でいること」
「それだけ?」
「それだけ。私はそれを守り続けてきた。これは唯一の私の意志」
言葉が途切れた。
言いたいことは全て言ったらしい。
「僕に近付いたのは、どうして?まさか、本当にソフトクリームだけが目的じゃないはず」
「二通り考えてた。一つは話すこと。私たちについて話すこと」
「もう一つは?」
「……考え中」
言っていることがめちゃくちゃだと言おうとしたら、バニラは「内容じゃなくて、やるかやらないか」と付け足した。
「やろうと思えば今すぐできる。だから、目的が二通りあるのではなく、二つあるの方が語弊はない。もう一つの目的は――あなたを殺すこと」
彼女の言いたいことは分かっていたはずなのに、僕も大概狂っている。
こんな言葉を聞いても、苦笑程度の動揺で抑えられるのだから。
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