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「悪いけど、殺される気はない。僕だって命は大事だ」
「私も殺人狂じゃない。あなたが嫌いなわけでもない」
「じゃあ、どうして僕を殺すと?」
バニラは無機質な瞳を虚空に向けたまま、溜め息を落とした。
「信用できない」
「そりゃあ、会うのは二度目だからな」
「あなたをじゃない。人間を、信用できない」
「僕は、半分は人間じゃない。別に君の信用を得るために言ってるわけじゃないけど」
僕はベンチから立ち上がった。
そろそろ学生達の下校時間だ。
友達は少ない方だが顔見知りは多い。
サボりだの言われるのも癪だ。
「続きは家じゃだめか?ナイトメアは君の敵じゃないだろうし、僕も敵視していない」
「……」
バニラは空から僕に目線を落とし、少し考えてからゆっくり頷いた。
「彼は、敵じゃない。けど……」
言葉を濁した彼女を不審に思ったが、僕は無視して家に向かおうとした。
その時、小さな鈴のような声が風に乗って聞こえてきた。
「敵じゃないけど、味方でもない」
言葉の真意を知る気はない。
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