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食卓に並べられたスープ皿に注がれていたものをビーフシチューだと思って一口含むと、僕は思わずむせ返ってしまった。
味が濃いとか薄いとかいう問題じゃない。
「……これ、何?」
〈シチューですよ〉
いつも通りの半透明の姿に戻ったナイトメアは愚問だと言わんばかりに迷いのない口調で言った。
けど、これはシチューじゃない。
ベースはシチューかもしれないが、明らかに違う。
「……焦げてる」
〈でも、テレビではそんな色でしたよ?〉
「それはビーフシチューだろ?家にあったのはクリームシチュー!元が違うんだよ」
〈あれー?でも、結構美味しかったですよ?〉
「味覚障害」
文句を言いながらも、僕は焦げたクリームシチューもどきを完食した。
ナイトメアはその様子を楽しそうに見つめていた。
「楽しそうだな。って言うか、嬉しそう」
〈だって、白が元気になったんですもの。嬉しいですよ〉
“そんな事を気にしていたのか”
ナイトメアは人間らしい。
僕よりも、それらしい。
バニラとは正反対だ。
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