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僕は突然目が覚めた。
《悪夢》のせいではない。
大きな物音……いや、誰かの争うような罵り声も聞こえてきたからだ。
「お前なんか!」
半分寝ぼけた僕の目に映ったのは、月明かりに照らされた憎々しげなナイトメアと、彼に首を絞められて尚、最小限の抵抗しかしないバニラ、そして、僕の枕元にある対なる人形。
人形には片方は髪が短く、片方が髪の長いくらいの違いしかない。
ただ、今は髪の長い方の人形の腕がもげてしまっている。
「何をしているんだ!」
「こいつが……」
ナイトメアが一層強く首を締め付けると、バニラは苦しげな呻き声を上げた。
「こいつが、いけないんです……!」
「バニラが何をしたんだよ!」
僕はナイトメアを彼女から引き離した。
案外すんなりと離れてくれたが、彼は不服そうにバニラを睨み続けていた。
そして、髪の長い方の人形を乱暴に掴むと、人差し指をそれの額に置いた。
「お前なんか、いなければよかったんだ!」
そう言うと、ナイトメアは消えていった。
それと同時にバニラの姿も消えかかった。
人形はしばらく宙を浮遊した後、僕の前で落下した。
僕は消えていくバニラを見つめながら、それを取った。
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