【二人】

18/42
前へ
/300ページ
次へ
僕は突然目が覚めた。 《悪夢》のせいではない。 大きな物音……いや、誰かの争うような罵り声も聞こえてきたからだ。 「お前なんか!」 半分寝ぼけた僕の目に映ったのは、月明かりに照らされた憎々しげなナイトメアと、彼に首を絞められて尚、最小限の抵抗しかしないバニラ、そして、僕の枕元にある対なる人形。 人形には片方は髪が短く、片方が髪の長いくらいの違いしかない。 ただ、今は髪の長い方の人形の腕がもげてしまっている。 「何をしているんだ!」 「こいつが……」 ナイトメアが一層強く首を締め付けると、バニラは苦しげな呻き声を上げた。 「こいつが、いけないんです……!」 「バニラが何をしたんだよ!」 僕はナイトメアを彼女から引き離した。 案外すんなりと離れてくれたが、彼は不服そうにバニラを睨み続けていた。 そして、髪の長い方の人形を乱暴に掴むと、人差し指をそれの額に置いた。 「お前なんか、いなければよかったんだ!」 そう言うと、ナイトメアは消えていった。 それと同時にバニラの姿も消えかかった。 人形はしばらく宙を浮遊した後、僕の前で落下した。 僕は消えていくバニラを見つめながら、それを取った。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17903人が本棚に入れています
本棚に追加