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「痛っ!」
いつも通り歩いていると壁に激突した。
鏡の迷路は想像以上に歩きづらいのだ。
下手をすれば曲がり角を見失い、袋小路に入ってしまう。
いつまでも迷ったままかもしれない。
“それは困る。ナイトメアが何をしでかすか分かったものじゃない”
「おい!返事をしろ!」
「……ここ」
初めての返答が帰ってきた。
空耳かと思うほど小さな声だったが、聞いたことのある高く澄んだ声だった。
バニラの声に、間違いない。
「どこだよ!」
「ここよ。あなたから見て右側の通路の先。今、通り過ぎた」
「通路なんかなかったぞ」
そう言いながら彼女の言葉通りに後退すると、本当に通路があった。
その先は螺旋のような一本道になっており、螺旋の中心部に彼女がいた。
最初に見つけた時、バニラは膝を抱えてしゃがみこんでおり、どこか寂しそうであった。
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