【二人】

20/42
前へ
/300ページ
次へ
「痛っ!」 いつも通り歩いていると壁に激突した。 鏡の迷路は想像以上に歩きづらいのだ。 下手をすれば曲がり角を見失い、袋小路に入ってしまう。 いつまでも迷ったままかもしれない。 “それは困る。ナイトメアが何をしでかすか分かったものじゃない” 「おい!返事をしろ!」 「……ここ」 初めての返答が帰ってきた。 空耳かと思うほど小さな声だったが、聞いたことのある高く澄んだ声だった。 バニラの声に、間違いない。 「どこだよ!」 「ここよ。あなたから見て右側の通路の先。今、通り過ぎた」 「通路なんかなかったぞ」 そう言いながら彼女の言葉通りに後退すると、本当に通路があった。 その先は螺旋のような一本道になっており、螺旋の中心部に彼女がいた。 最初に見つけた時、バニラは膝を抱えてしゃがみこんでおり、どこか寂しそうであった。
/300ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17903人が本棚に入れています
本棚に追加