【二人】

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「何で、この壁、鏡なんだろう」 「……?」 「コンクリートでもいいのにさ。鏡の迷路なんか、気持ち悪いだろ」 迷いやすい上に、嫌というほど自分の姿が映る。 一つや二つ映るくらいなら許せるが、合わせ鏡になると数え切れなくなるほど無尽蔵に僕が現れる。 「ずっと思ってたけど、バニラはあまり表情を出さないよな。それって、感情が無いのか?それとも、隠してる?」 「……」 「答えたくないならいいけど、この夢を見る限り、後者だと思ってる。本体を見つけにくい、この鏡の迷路を歩く限りは」 実際、バニラが黙っていたら、一生ここを彷徨っていたかもしれない。 彼女が声を出してくれたから……僕を認めてくれたから僕は迷っていないのだ。 「《ナイトメア》は《願い》、か。だとするなら、バニラは何を望んでるんだ?」 「私の……《願い》?」 考えたこともないのか、もしくは、そんなもの忘れてしまったのか。 バニラは困ったように頭を抱え込んで、最終的には「……分からない」と小さく溜め息と一緒に言葉を落とした。
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