【二人】

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「分からない。私は、彼さえ幸せなら……それが《願い》?」 「だとしたら、この《悪夢》は消えているだろうな。バニラは、あいつが笑ってるのを見ているはずなんだから。あいつが幸せだと感じたから、本体の人形を僕に預けたんだろ?」 鏡。 姿を映すもの。 姿を増幅させるもの。 「鏡は、本当の姿を映すもの」 「本当の、姿?」 「そう。前に、父親の《悪夢》で見たんだ。鏡に、自分の心が映ったのをさ」 確か、あの時の僕は目を閉じて耳を塞いでいた。 あの鏡は壊してしまったが、今の僕はどう映るのだろう。 あの頃のままだろうか。 それとも、少しでも変わっているのだろうか。 「バニラは、どうしてここにいるんだ?鏡に囲まれて、何を望んでるんだ?」 「私は……」 バニラは丸めていた背を伸ばし、鏡と向き合った。 そして、鏡に映った自分を物珍しそうにまじまじと見つめ、手を伸ばした。 ゆっくりと、少し怯えるように躊躇いがちに、しかし何かを掴もうと鏡に手を伸ばした。 「私は……!」 鏡に触れた途端、バニラの瞳から涙が零れた。
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