17903人が本棚に入れています
本棚に追加
「分からない。私は、彼さえ幸せなら……それが《願い》?」
「だとしたら、この《悪夢》は消えているだろうな。バニラは、あいつが笑ってるのを見ているはずなんだから。あいつが幸せだと感じたから、本体の人形を僕に預けたんだろ?」
鏡。
姿を映すもの。
姿を増幅させるもの。
「鏡は、本当の姿を映すもの」
「本当の、姿?」
「そう。前に、父親の《悪夢》で見たんだ。鏡に、自分の心が映ったのをさ」
確か、あの時の僕は目を閉じて耳を塞いでいた。
あの鏡は壊してしまったが、今の僕はどう映るのだろう。
あの頃のままだろうか。
それとも、少しでも変わっているのだろうか。
「バニラは、どうしてここにいるんだ?鏡に囲まれて、何を望んでるんだ?」
「私は……」
バニラは丸めていた背を伸ばし、鏡と向き合った。
そして、鏡に映った自分を物珍しそうにまじまじと見つめ、手を伸ばした。
ゆっくりと、少し怯えるように躊躇いがちに、しかし何かを掴もうと鏡に手を伸ばした。
「私は……!」
鏡に触れた途端、バニラの瞳から涙が零れた。
最初のコメントを投稿しよう!