17903人が本棚に入れています
本棚に追加
「私には自分を証明できるものがなかったけど、彼の存在を認識することで自分の存在を感じていたの。だから、私には彼が必要だった。彼が幸せなら、私も幸せだと、そう思ったの。でも……」
「でも?」
「でも、私はいつしか、彼から離れたくなった。彼を、視界に――意識化に入れたくなくなったの」
バニラは鏡を見つめた。
そこに映っているのは、紛れもなくバニラだ。
「急に欲しくなったの。確立された、《私》という存在が……。彼がいなくても証明できる、《私》が欲しかった」
「持っているだろ?現に、僕はバニラとナイトメアは別のものだと思ってる」
「それじゃダメ。彼がいなければ、私は無価値。価値が欲しいわけじゃないけど、私は……自分を証明したかったの。誰でもない、代わりの利かない《私》」
ナイトメアと一緒にいることで認識していた自分の存在。
けれど、バニラは一人の存在として認められたかったのだ。
ツインドールだから、いつもナイトメアと一緒。
ペアでなければ、誰も欲しがらない。
一人では誰も認めてくれない。
バニラはそれが辛かったのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!