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「だから、俺じゃないって!!」
男の怒声が響きわたった。
机が整然と並んだオフィスには一瞬静けさが広がり、一点に視線が集中したが、またすぐにガヤガヤとし、各々の世界に戻っていった。
視線が集まった先には、
『企画部』と書かれたプレートが天井から吊り下げられ、数名の男女がやり取りをしていた。
「あの時間はあんたしか居なかったんだから!」
一人の女が不精髭を生やした男に言い放つ。
(…いつも周りは俺のせいにする。何かあるとすぐ。昔っから。小学校時もそーだった。俺はあの娘のリコーダーは決して舐めちゃいない、舐めたのはピアニカだ!)
「ちょっと何とか言いなさいよ!」女が言うと、
「だから、言っただろ!俺じゃない!…高橋さんのリップを盗んだのは俺じゃない!」
…すぐに疑われる男、
角(すみ)。
この男もまたその疑われ易さ故に日本一奇妙な事件に巻き込まれる事になる一人だった。
ちなみに、盗んだのはハブラシである。
エイティ★☆
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