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  俺の目はまだチーちゃんを見つめたまま しかし、チーちゃん越しに見える智哉は部屋のドアにもたれ、腕組みしながらいつもの様に笑っている 「お前、チーちゃんの事、大事にしてたんじゃないのか?」 ドアから離れ、腕組みしたまま滑るように俺の方へと近付いてくる 「お前は大事に思ってる奴ほど殺したくなるんだな。」 智哉の手が俺の左腕に触れる 真夏だと言うのに、思わず鳥肌がたちそうになる程の冷たい手‥‥‥ 智哉に付けられた傷口を隠すように、その手が俺の左手首を強く掴んだ 何も言えず、何も動けないまま、智哉の次の言動を待った 俺の視界から少しずつチーちゃんが見えなくなり、その代わりに智哉の顔が入り込んでくる こんな薄暗い部屋の中でも分かるくらい青白い顔をした智哉の口が静かに動いた  
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