プロローグ

2/2
前へ
/71ページ
次へ
恋愛においては、恋をしたふりをする方が本当に恋をしている人よりもずっとうまく成功する。 この名言はフランスニノン・ド・ランクロというフランス人女性が残した名言の一つだ。 恋は盲目とよく言ったもので、本気で誰かを好きになると人は理性を失い前後の見境がつかなくなるほど夢中になってしまう。 しかし、恋とは残酷なものだ。 恋愛においては純粋さや一途な想いが返って無駄なものだとつくづく知る。 勉学やスポーツと違い、恋愛に必要なのは積み重ねた努力ではない。計算高く、いかにずるく生きるかだ。 しかし、だからといって私自身が別に恋愛に関して、嫌味を抱いているだけでも、幻滅しているわけでもない。 ただ、単純に恋愛とはそういったジャンルだということを……私は昔、それを嫌というほど、思い知らされた気がする。 それはもう、御伽話のような古い記憶にさえ思える。 今となれば、懐かしい想い出。 仮にその記憶に残っていたとしても私には関係ないことだ。 だって、あの人と再会することなど、もうないはずだし。 なにより私にはもう……。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

170人が本棚に入れています
本棚に追加