過去の記憶

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「あっ。おはよう! 真次」 事務所に入ると、開いたブラインドの窓から太陽の日差しが差し込む。そして、助手の彼女はいつも通りの明るい笑顔で私を出迎えてくれた。 「おはよう」 「コーヒー出来てるよ。もちろん、飲むよね?」 「……あー、うん。悪いな」 彼女はキッチンに置いてあったコーヒーサイホンをマグカップに注ぐとそのまま、私のテーブルへ置いた。 入れたてのコーヒーからはコーヒー豆の香ばしい匂いが漂い、一口飲むと先程までは眩しいだけだった太陽の光も心地よいものとなる。 「あっ。砂糖入れてないよ」 と、彼女はわざとらしく慌てた様子をみせると、片手にはビンに入った角砂糖を手にしている。 「俺はいらないよ」 と、いちいち相手にするのも面倒なので、私はテーブルにあった今日の新聞に目を通した。 「ちぇ。つまんないの」 逃げられたとわかった彼女は不服そうに唇を尖らせ、そのままキッチンの方へ戻って行く。 と、いつも朝はこんな感じで始まりを告げる。 この宇都宮探偵事務所は現在、所長の私と彼女の2人で経営している。 助手の名前は姫田海夢(ひめた みゆ)現在18歳。栗毛色のストレートの髪を肩まで伸ばしている。普段は私と性格は正反対で愛想も良く、面倒見が良い性格。口煩い性格が玉に瑕だが……それにも、もう慣れた。
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