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「海夢。今日の予定は?」
私はコーヒーを一口飲むと、海夢に今日のスケジュールを確認する。
海夢は手帳を取り出し、ページをペラペラと開いて言った。
「今日は特に来客予定はないよ」
「そうか。珍しいな」
「平和だって証拠よ。いいことじゃない」
「そうだな」
とはいえ、本当に世の中が平和だったら、全国の探偵事務所は潰れてしまう。
まあ、ここ最近、忙しかったからな。たまにの『平和』なら、大歓迎だ。
「この前、頼んだ佐々木さんの浮気調査に関する報告書はどうだ?」
「もう昨日、仕上げちゃったよ」
「早いな。じゃあ、他の書類整理は」
「それも終わった」
海夢はたんたんとした、それであってどこか得意げな口調で僕にその書類を提出した。
私は書類に軽く目を通して、問題がないか確認をする。
「ああ、特に問題ないな。じゃあ、今日はもう帰っていいよ」
「えっ?」
「いや、最近、海夢も残業続きで疲れているだろ。明日は土曜日で休みだし、今日は早く帰ってゆっくりするといい。大丈夫、別に給料から差し引いたりしないから」
私は窓の外の眩しい太陽に目を細めると、今日は事務所でジッとしているには勿体ない気がした。
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