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無限の鼓動。
無限のリフレイン。
押しては引き返す波。
絶え間なく奏で続けられる深淵からの潮騒。
金色に輝く円い月が私を見下ろす。
漆黒のキャンパスに鏤(ちりば)められた銀の弾丸が一つ美しい軌跡を描いて消えた。
窓の外から得られる情報はそれだけ。
今まで確かにいた筈の世界ではない。いる筈の少女も、あるべき剣も……。
ピッ……ピッ……ピッ……。
断続的な電子音がこの空間に響き渡っている。やわらかな潮騒と電子音が対照的だ。
潮の匂いはしない。そのせいか眼前に広がる視覚的、聴覚的な海が確かなものとは思えない。
白いデコレーションケーキのような、生クリームを塗ったような壁紙の部屋。古いが、決して不潔ではない印象を与える。馴染みのない不思議な匂いがする。
私の身体中に接続された線やチューブ、その接続先の器機などがここが病院であることを私にはっきりと認識させる。
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