第二章~邂逅――真実の門、そして始まり――

5/12
前へ
/20ページ
次へ
 薄暗い白色蛍光灯から降り注ぐ光の雨はあらゆるものに反射し、私の瞳に飛び込んでくる。そこにものが存在することを私に伝える。  様々な形をした陰影が白いデコレーションケーキの壁にその姿を映し出す。  人は……いない。 「……シンシア」  いつも隣りにいたパートナー。  小さなパートナー。 「私は何故ここに……?」  記憶がない。……というわけではない。ここに来た記憶はある。確かにある。ただ、それはぼんやりと輪廓の惚けた記憶。不確かな記憶。綿菓子のような、触れるだけで溶けてしまいそうな曖昧な記憶。 「私はアルカナで……」  夢……幻影……虚像……。  たとえそれが夢であると理解していようが……理解せざるを得ない状況であろうが、私の中の『現実』がそこにあった。夢の中に『現実』が存在した。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加