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薄暗い白色蛍光灯から降り注ぐ光の雨はあらゆるものに反射し、私の瞳に飛び込んでくる。そこにものが存在することを私に伝える。
様々な形をした陰影が白いデコレーションケーキの壁にその姿を映し出す。
人は……いない。
「……シンシア」
いつも隣りにいたパートナー。
小さなパートナー。
「私は何故ここに……?」
記憶がない。……というわけではない。ここに来た記憶はある。確かにある。ただ、それはぼんやりと輪廓の惚けた記憶。不確かな記憶。綿菓子のような、触れるだけで溶けてしまいそうな曖昧な記憶。
「私はアルカナで……」
夢……幻影……虚像……。
たとえそれが夢であると理解していようが……理解せざるを得ない状況であろうが、私の中の『現実』がそこにあった。夢の中に『現実』が存在した。
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