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それは事実。『今』よりも『現実』だった。大切なオモイデ。掛替のない真実。
広い部屋。病室。病院独特の匂いが充満している部屋。出口は二つ。海が聞こえる窓か、金属製のドアノブに細長い磨りガラスが嵌込まれている扉。静まり返った世界。
その静寂を破る無慈悲な電子音――心電図――。
普通に使用すれば優に六人は収容できる広さがあるだろう。そんな部屋に一人。
身体に繋がれた幾つかの配線を外す。緩慢な動作でベッドから抜け出す。
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