第一章~invisible tears 『みえない涙』

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『貴女はここまでどのくらいで来れたの?』  繰り返される科白。 「ここまでって?」 『時間、どれくらいの時間で?』  腕時計はここに、『アルカナ』に着いた時からずっと着けている。 「えっと、最初に10日間倒れていて、ノルンの村で一泊。その前に草原を何時間かで抜けて、山を越えて15日。森の中で10日彷徨って、砂漠を5日、ウル・コンで一泊して、ここまで荒地を5日。それで今に至る」  多分これで全部……だよね。 『最初の10日は除いて、移動に要した時間はおよそ37日、若しくは38日。それだけで数千万、いや本当は数億人はいる一つの【世界】を。馬ならまだしも、徒歩で歩ききれるとおもってますか?たとえ不眠不休で歩くことができたとしても』  答えられない。不可能だ。歩ききれるわけがない。
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