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「此所は汝のいるべき場ではない、もっとも、一つ前の世界でもないけれどね」
一つ前の世界?
「此所での、この世界での我々の役目は終わりだよ、ミル。どうやら、また失敗のようだね」
焦点の定まっていない瞳の死体、ミルに話しかけるシンシア。シンシアは『彼女』のことを最初から知っていたのであろうか。
「ちょっと!一体どういう意味!?」
眩い光に世界に包まれる。初めと同じ。初めと同じ光だけの世界。さっきまであった計器類の姿は無くなり、ただ計り知れない広大な光の世界。その中に私達三人だけが取り残される。まるで無地のキャンパスについた染のように。
「わたし達の役目は終わった。彼女、皐月は『あの時』から成長したのかな……。でももうそろそろ終わりにしないといけない」
「そうね、私の『悪魔』としての役割も終わり」
シンシアと悪魔が会話をする。しかし、二人の瞳は私を見つめたままだった。
「あなたは……皐月は次はどうするの?」
「えっ、次?」
初めて私の名前を呼んだシンシアの瞳は悲しみとも、憐れみとも言えない不思議な色を湛えていた。
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