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北村洋子は、東横線沿線のパチンコ屋で必死にパチンコ玉の行方を目で追っていた。
そして最後の一個が、外れの穴に消えて洋子は、パチンコ台を力一杯叩く。
入口に置かれた飲料水の自動販売機の横の椅子に座り洋子は、店内を見回すが、性的サービスを代償に出玉を提供するような男性客はいなかった。
「お困りの様ですね。何ならお金を用立てますが、ちょいとばかり利子が高いですが」
洋子は、力無い目で男を見る。
髪をオールバックにした眼光鋭い男は、一目で裏の人間だと分かったが、洋子は男に後をついて行く。
洋子は、消費者金融の支払日が今日までで焦っていた。
男の運転するベンツで事務所に行った洋子は、五万円の借用書にサインをして、運転免許証のコピーを取られる。
返済期限は、三日で二割の利子が付く。
「二十五番か三十番の台は、出ますよ」
パチンコ店の駐車場からベンツを降りる洋子に、男が声をかける。
洋子が、二十五番のパチンコ台に座り、打ち始めると、すぐに大当りをして、みるみる出玉を増やす。
消費者金融と闇金業者への支払を済ませ、ステーキ肉を奮発した洋子の財布には、明日のパチンコの軍資金には、充分過ぎる程のお札が入っていた。
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