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ほとんど真っ暗な一室
冷たいコンクリートの壁が、一瞬ゆらいだ様に見えたと思うと、壁から10代半ば位の白い……女の子が抜け出てきた。
『さあ、いらっしゃい。逃げましょう』
女の子が手を差し伸べると、こちら側からその手を取る手。まだ少年のようだ。
手をひき、女の子は壁に吸い込まれるが、少年は壁にぶつかる。
再び、壁から出てくる女の子。
『あ、そうか。しょうがないわねぇ。
えいっ!』
一瞬、闇に包まれる。
『これでよしっと。
さてと……ほら、外に見張りがいるでしょ。彼ね』
ドアの端の曇りガラスに男の影が見える。
(ドアの向こう……
外……男……
どんな男……痩せて、色黒で、さっさとこんな見張りの仕事なんか終えて、今夜もリンリンの店に……
ピカッ!
……何だ? 今のは!?
あれ? 廊下!?
外だ! 外だ!
出られた)
走り出す少年。
少年の名は
早乙女ジョージ。
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