序章

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1999年 12月某日 横浜 『じゃあ行って来るよ、母さん。』 『は~い。何かあったらすぐ連絡する事、忘れないでね。』 眩しすぎる程の朝日に照らされた二人の親子は、まるでどこかの絵画にでも出てくるくらい神々しく、爽やかである 青年の名は黒澤 真 まっすぐで純粋な瞳をした好青年で、人一倍正義感が強い というのも常時繰り返される家庭内暴力のせいで、父親を反面教師として捉えたからに他ならない また、そんな劣悪な家庭環境にも関わらず、真がこうも真っ直ぐに成長できたのは母親の美咲の影響が大きいであろう 彼女は天真爛漫という言葉がぴったりと合う、常に笑顔を絶やさない明るい性格で、そしてなにより見とれてしまうほどの容姿の持ち主だ 『わかってるよ、もうガキじゃないんだから。行って来ます。』 踵を返し、軽く手を挙げ駅へと歩を進める真 それを曲がり角で見えなくなるまで手を振り続ける美咲であった
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