序章

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実際、金銭の問題で真は幼少期に孤児院に預けられていたのだが、美咲がなんとか徹を説得して2年前にやっと同居できた 一緒に生活した時間はまだごく僅かだが、真は美咲に心底感謝している 孤児院の生活は劣悪極まりなく、通常の精神では生活が困難であったからだ そこに収容された子供達は皆「先生」と呼ばれる大人達の機嫌を損ねぬ様に、常に気を使う その様は子供特有の無邪気さなど皆無だった そんな環境で育った真がここまで明るくなれたのも、偏に美咲の力が大きいであろう 唯一、孤児院で得たモノといえば人一倍洞察力が身に付いた事であろうか おかげで徹とは微妙な距離関係を保てた為、真正面からぶつかり合う事はまだ一度も無かった 只、自分と徹がぶつかり合った場合、美咲はどちらに付いてくれるのかなどと、くだらない思慮をしている時もある 色々と思い出に耽っていると目的地である新宿に着く この時にはこの場所で自分の運命の歯車が狂い出す事に、まだ気が付かない真であった
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