序章

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真が今回新宿まで来た理由は、この就職難の時代にも関わらず、初任給が四十万という破格の仕事だったからだ しかも資格などは何一つ必要なく、願ったり叶ったりであった しかし、真もこれを真に受けているわけではない これだけの高給にはなにか裏があると踏んでいた 少なからず、孤児院で学んだ社会の縮図が役に立っているのであろう 弱い者は虐げられ、強い者に搾取されるのがこの世の中の条理 時には食料さえ搾取されていた経験が危険信号を放っている だが、真は逆にこれを好機とも感じていた どんな仕事であろうとそれだけの収入があれば、美咲に大分楽をさせてあげることが出来る 逆に通常の仕事では、結局、貧困の連鎖からは抜けられぬ事を見切っていた なにがなんでも金を掴む 緊張で掌は汗でぐっしょりとしていたが、決意は固く、指定された喫茶店へと辿り着く 【さて、なにが出るか。楽しみだ。】 本当は不安で押し潰されそうであったが、精一杯の強がりを頭の中で演じていた
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