いらない運命

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「もうお前は、あの女のじゃない。俺のだよ」 「…っ!」 「シロト様!」 さらっと言いのけた少年に、少女は唖然とした表情で固まった。 瞬間、怒気のこもった声で中年の男が少年を呼びつける。少年は一気に不機嫌な顔で振り返る。 「何だよ」 「貴方達はっ…命を何だと」 「くだらん愚民の戯れ言だな。死ね」 ガチャッと少年の父親が中年の男に銃を向けた。 それを見た少女は、少年の腕を振りほどき、中年の男の前へ庇うように駆け寄る。 「…ラナちゃん?」 「…やめてよ」 もうやめて。 それは、沢山のものを奪う。 「やめて」 奪うばかりで、得るものなど何もない。 「やめてよ」 幸せを、奪われた。 「何でもする、だから」 大好きな母親を、奪われた。 「じゃあさ」 大切な人との未来を奪われた。 「俺の言うこと何でも聞く………従者になってよ」 自由を、奪われた。
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