信じてほしい

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何故俺は後ずさってるんだ? トウキは無意識に後ろへ引いた右足をちらりと見て、直ぐに目の前の少女へ視線を移した。 「トウキ君」 どう見たって弱くて頼りなくて。今にも泣きそうな少女なのに。 なのに何で、自分の体は後ろへ下がる? 怖いのか? こんな小さな少女が? 「嘘じゃないよ」 ぴたり、と足を止めたラナと立ち竦む自分の距離はほぼない。 身長差の為、見上げてくるラナの顔は、やはり泣きそうな強がり。 「優しい、んだよ」 「だからっ! 俺は人間じゃ」 「でも、いるよ」 小さな手が、そっと胸に添えられた。丁度心臓がある所。 トクン、トクン、と規則正しく脈打つ鼓動が、ラナの手のひらへと伝わっていく。今、少しだけ速くなった。 「ここにトウキ君っていう存在が今、私の目の前にいるよ」 手持ちぶさただったもう片方の手を、自らの胸に添えて瞼を閉じる。 「私と同じ様に、心臓が、動いてるよ」 優しい声、優しい手。 温かい笑顔に温かい言葉。 じん、と染み入ってくるそれらをどうしていいのかわからずただラナを見詰める。 駄目だ駄目だと言い聞かせているのに、どこか心地好く思う自分が、憎たらしい。
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