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何故だろう、肩を掴む手は、とてつもなく強くて、痛くて。きっと痕になっているだろうに。
それなのに。この力が、とても悲しいものに思えて。放して欲しいとは、思わなかった。
そっと手を添えれば、びくりと体を震わせて俯いてしまう。
どんな表情をしているのかさっぱりわからない。
「お前等は、いつもそうだ」
その声が微かに震えているような気がしたが、ラナは何も言わずに消え入りそうなその声に耳を傾けた。
「ハナから、そんな気なんかないくせに」
そんなことない、そう言おうとしたラナだったが、おもむろに上げたトウキの顔が、あまりに悲しくて、寂しくて。
口をつぐみ、その震える腕に力を込めるしかなかった。
「もう二度と………俺の前で口にするな」
ギッ、と睨み付けると、漸くラナの肩から手を放した。
「…どうすれば」
部屋を出ていこうとしたトウキは、その言葉にドアノブに手をかけたまま動きを止めた。
振り返らずに言葉を待っていれば、嗚咽を押し殺した声が後ろから聞こえてくる。
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