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「ゲホッ…。汚い館だ。おい、どこにいる! ラナを返してもらおうか!」
シロトは何処かにいるであろうトウキに向かって声を張り上げた。
だが、まるで館に吸い込まれるようにシロトの声は直ぐに消えて、シロトはチッと舌打ちする。
「退治してやる、出てこい!」
そう叫ぶと、ガタンッと物音が聞こえ、顔を上げる。
階段の上に彼はいた。傍らにはラナが立っている。
トウキはラナを姫抱きすると、階段の手摺に飛び乗った。
「う、わっ! あ、危ないよ降ろして!」
「大丈夫だ、掴まってろ」
そう言うと、トウキはフッと手摺から飛び降りる。
あまりの急な出来事に、小さく悲鳴を上げるラナだったが、すぐにトウキの足が床についた途端脱力したようにトウキにもたれ掛かった。
「き、来たな。ラナは返してもらうぞ」
スラッと背中の退魔の剣を抜くと、トウキに剣先を向けた。
トウキはそれに動じる様子もなくニカリと笑うと、ラナの肩を掴みぐっと自身に抱き寄せた。
「なっ…」
「そいつは聞けねえなぁ」
挑発的に笑ったまま、トウキはラナを掴む手に力を込める。
一方でシロトは、トウキの言葉に憤ったのだろう、鋭い視線を向けていた。
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