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「…何を言ってる…?」
「そのままの意味だ。ラナを置いて、帰ってもらおうか」
グッ、とラナを掴む手に力を込めた。
ラナもまた、トウキの服をぎゅっと握り締め、シロトに強い視線を向ける。
シロトは益々気に入らないといった表情で眼前の二人を睨み付けていた。
「お前が来いって言ったんだろうが!」
「気が変わった」
しれっと言い放つトウキに、シロトはぐんぐん怒りを膨らませた。
「俺はコイツと生きる。例えこの先、お前ら人間が俺を蔑み続けても、変わらなくても。コイツがいるのならその運命に流されていく」
そうだ。もしも人間がずっと俺を認めなくても。
コイツが、ラナが傍にいるなら俺は構わない。この先ずっと、未来永劫……一緒に、いられるのならば。
「ふざけるなっ!」
シロトは怒りに満ちた声で、怒鳴り散らした。
ラナはビクッと体を跳ねて、トウキの服を掴む手に自然と力がこもる。
「ふざけるな、ふざけるなよ。ラナは、俺のモノだ。俺の婚約者だ。そうだろうラナ。お前はずっと俺の所にいるんだ」
そう言ってラナを見たシロトはとても歪んだ顔をしていた。
いや、全てが歪んでいた。瞳も、心も。
ラナは恐怖に戦慄く心を叱咤すると、ずっと掴んでいたトウキの服を放した。
真っ直ぐに前を、シロトを見て、ピンと背筋を伸ばして。
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