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「……シロト様。私は、トウキ君と生きていきたい。今までいらない運命に流されてきて、私はもう未来も今も諦めていました。どうせ変わらない、今も未来もいずれは過去になる。そして過去はいつまでも、辛いものでしかないのだと」
ラナは、きゅっと胸の前で自身の手を握った。そして、俯いて自分の爪先を眺める。
怖い。眼前のシロトが、鋭く歪んだ眼光をラナに向けていた。
ラナはカタカタと震える全身を、唇を必死に落ち着けようとしたが、どうしても顔が上げられない。
じわり、と視界が歪んだ。
「ラナ」
ふわり、と何か温かいものに包まれた。
心地好いテノールの声が、安心させるように、あやすように耳元で力付けてくれる。
握られた手をまた強く握り、ラナは顔を上げた。
その瞳には強い意志の現れ……。
「だけど……。今、そして未来……。トウキ君が傍にいてくれるのなら私はそのまま運命に流されたっていい。もしも一緒にいられない運命なら、私は躊躇なく運命に逆らったっていい」
にこり、と満面の笑顔を浮かべた。
「私はずっとトウキ君の傍にいる。シロト様の元にはいられません」
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