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「ふん。魔人も血は赤いんだな」
冷たく言い放つシロトに、トウキはへっと悪態をついてみせる。
肩を竦め、少しおちゃらけた様子で「緑色してるとでも思ったか?」と挑発した。
「ト、トウキ君……傷が……」
心配そうに近付いて来ようとするラナを制し、トウキは安心させるようにニッと笑った。
親指で血を拭い、その親指をペロリと舐める。
口に広がる鉄の味に、トウキは顔をしかめた。
「トウキ君……無茶しないで……」
「出来たらな」
苦笑しながら、トウキは再度右足を引いて構えた。
カタカタと退魔の剣を震わせながら、恨みがましくトウキを睨み付ける。
「渡すものか……。魔人なんかに、俺のものを、渡すものか……」
うわごとのように呟きながら、シロトが剣を一閃する。
すると、無数の光の欠片が放たれ、トウキは身構えるもあちこちにそれを食らってしまう。
食らった瞬間、服と皮膚が避けて血が吹き出した。
「トウキくっ――」
「あははははっ!」
絶句するラナと、高笑いするシロト。
放たれた光の欠片――退魔の気は、天敵であるトウキの身体を容赦なく切り付ける。
「どうした魔人? 止まってるじゃないか」
その言葉と共に、鮮血が散った。
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