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「こく、は……」
シュピッ、と黒い刃が放たれ、それはシロトの頬を走り血を滲ませる。
トウキは立ち上がり、荒く呼吸を繰り返しながらラナに離れるように促した。
「でっでもっ! トウキ君、酷い怪我……」
「大丈夫だから、待ってろ」
弱々しく笑いかけて、トウキはラナの頭を優しく撫でた。
「俺は、魔人だぜ? こんなんじゃ死なねェよ。ちっと待ってろ……。絶対に、勝つから」
ラナは滲む涙をぐしぐしと拭って、こくりと頷いた。トウキは満足そうに笑むと、途端に厳しい表情になってシロトを睨み付けた。
ラナが離れた柱に身を隠すのを見届けると、トウキは重い体にむち打ち、飛び出した。
「うおおおおおっ!!」
「ふん」
激しい攻防戦が繰り広げられる。パッと見、互角のようだが飛び散る血潮は全てトウキのものだった。
ラナはトウキが血濡れる度に心臓を鷲掴みにされたようにきゅっと身を縮めた。
「く、そ……」
目が、霞んできた。
ごふっ、と吐血して膝をつくトウキに、容赦なくシロトは蹴りを入れた。
仰向けに倒れるトウキは幾度となく咳き込み、その度に血を吐いた。
「――トウキ君っ!!」
耐えきれず、ラナは大声でトウキの名を呼んだ。
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