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「終わりだ……」
懐から、鋭く光るナイフを取り出した。
「最後は血濡れていないこの光るナイフで心臓を貫いてやろう」
新品のように光沢を放つナイフの切っ先をトウキへと向ける。
ニタァ、と聖とはいえない歪んだ笑みを浮かべた。
「っ、くそが……」
よろよろと立ち上がるトウキだったが、もう、動く力は皆無だった。
掠れた視界の中で、五メートル先に、高笑いするシロトが浅ましく見えているだけ……。
「じゃあな!」
ナイフが放たれ、鋭い切っ先は真っ直ぐに向かってくる。
避けようにも、体は動かない。
(……ラナ、悪い)
心中で一言謝罪し、トウキは目を閉じた。
「死んじゃ、嫌だよ……! トウキ君っ!!」
「あ、ああ……」
トウキはいつまで経っても訪れない衝撃と、シロトの漏らした声に目を開ける。
そこですぐ目に入ったのは、小さな少女の背中だった……。
「ラ、ナ……?」
「ト、ウ……キ、君」
途切れ途切れに言葉を溢し、ラナがゆっくりと後方に倒れる。
それを抱き止めたトウキは、ラナの胸に突き刺さったナイフに、驚愕した……。
「ラナ!!」
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