護るから、だから

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「黙れ! 黙れ! 黙れ! 黙れ黙れ黙れ!! お前のせいで、お前のせいでラナは!!」 涙を流しながら、トウキは叫ぶ。 ギュルギュルとトウキの周りを魔力が渦巻いていく。どす黒い力の奔流が辺りを叩きつけるようにうねる。 「アアアアアア!!」 ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。 心臓が、熱い。 何も考えられない。ただ心を支配するのは憎しみだけ……。 「ラ、ナ……」 その言葉を最後に、トウキの意識は深い闇の中へと消えていった。 瞳にはただ殺気の籠る鋭さだけが光る。 元々微かに覗いていた牙はまるで何かを食いちぎる為に存在しているかのように伸びていた。 理性、なんて言葉などどこにも通じない。 「ウアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 枷が外れたかのように、ただひたすら咆哮する。 その腕には、血に濡れた少女を抱いて。 ただただ抱き締めて、涙を流し、少年の意識はどす黒く、そして悲しく……。 「……」 ただ殺意が向けられるだけだった。
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