護るから、だから

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ゆらり、と覚束ない足取りで踏み出したかと思った瞬間、すぐシロトの眼前に現れた。 それに目を見開き、距離を取ろうとしたシロトは、すぐにトウキに首を掴まれる。 「がっ!」 「……ころす」 ミシミシと軋む音、微塵も感じられない躊躇い。 殺される。シロトはそう直感し、ぞくりと背筋を凍らせた。 「がっ、は……は、なせ!」 魔人の持つ魔力とは対となる力。退魔の力を手に集束し首を掴む手を握る。 瞬間、トウキは火に当たる獣のような呻き声を上げて飛び退く。 「ぐあああっ!!」 「化け物め。今すぐ殺してやる」 退魔の剣の切っ先を真っ直ぐトウキへと向け、自身もトウキをねめつけた。 トウキはもう理性が存在しないのか、ボタボタと落ちる血など気にもしない。 「ウアアアアアアア!!」 「っ!」 次々と打ち付けられる拳を流しながら確実に体を斬りつける。 だが、身体中血にまみれてもトウキはもう顔色を変えなかった。 「この、化け物がぁぁぁっ!!」 ズシャッと肩を斬りつけられてトウキは仰向けに倒れた。 「……ぐぅぅ」 小さな唸り声。 ガッと見開かれた瞳は、赤く赤く、そうまるで血のように染まっていた……。
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