護るから、だから

5/11
前へ
/57ページ
次へ
ドクン。 いつになく心臓が熱い。 トウキはまるで眠っているような感覚の中、そう思った。 痛みも、悲しみも。もう感じたくはなかった。 (初めて、だったんだ) 一緒にいたいと思ったのも。 守りたいと思ったのも。 愛しい、と思ったのも。 それなのに守れなかった。傷付けてしまった。 何一つ、してあげられなかった。幸せに、したかったのに。どうか、どうか。 俺の命ならいくらでもやるから。俺はどうなってもいいから。 だから……。 彼女に、幸せな未来を。 その為なら。 俺は痛みや悲しみに、押し潰されても構わないから。 「ウアアアアアアアアア!!」 悲しき咆哮と共に。 シロトの視界がぶれた。 「がっ!」 殴り飛ばされたシロトは、すぐに立ち上がろうとするも、眼前で自身を見下ろすトウキに固まってしまった。 そこには歪んだ笑みでシロトを見下ろすトウキがいた。ぞくり、と背筋を悪寒が走った刹那、シロトは頬に衝撃を感じた。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

186人が本棚に入れています
本棚に追加