護るから、だから

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眠くないのに、目が開かない。 寒くは、ない。暑くも、ない。 遠くで、声が聞こえる。 それはひどく優しくて、悲しくて、愛しい声。もっと近くで聞きたいのに。もっともっと、近くで。 君の、隣で。     『愛してる』 うん、私もだよ。 そう言いたいのに、口は開かない。 ねぇ私の気持ちは、伝わっているかな? 私は、いつ死んだって良かった。 お母さんを殺した肉親の使用人にされて、挙げ句の果てには伴侶にされそうになった。 お母さんを殺した人の家族になるところだった。 舌を噛みきろうとも思ったけれど、臆病な私には出来なくて、ひりひりするだけの舌が、堪らなく腹立たしくて。 そんな私が、ナイフの前に、躍り出るなんて、ね? 『君が、生きているのなら』 そう、思ったの。 けれど……。 「俺の命で、お前が助かればいいのに」 一緒に、生きたい。 生きたい、生きたい、死にたくない。 君の、トウキ君の、隣にいたい。 神様、神様。 何でもします、しますから、私に時間をください。
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