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夜。
沢山の人々を、頭上のシャンデリアが照らす。
テーブルには豪華な食事に高価なワイン。皆が楽しそうにそれらに舌鼓を打つ中、ラナは俯きながら立っていた。
「見てよアレ。従者よね、見たことあるわ」
「マジかよ。図々しいな、こんな所までしゃしゃりでて」
「ラナの奴、あたし達を差し置いてムカつくわね」
そんな陰口を聞きながら、ラナは耳を塞ぎたくても塞げず、ただ立つだけだ。
そんなラナに、
「やあ、ラナ。楽しんでるかい?」
タキシードに身を包んだシロトが歩み寄る。
「(…全、然、楽しめないよ…)はい」
何とか笑顔を浮かべ言うと、シロトは満足そうに笑みを浮かべた。
「あと五分で君を紹介するから」
「…はい」
嫌だと心で叫んでも、口は肯定しか出さない、出ない。
浮かべそうになった涙を堪え、シロトが手を掴んだ。
…その時だった。
ガシャアン!!
一面張りの硝子が割れる音、人々の悲鳴。
シロトはラナの手を放し、ラナは茫然と音のした方へと視線を向けた。
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