君、愛しき。

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「ふぅ」 すっかり綺麗になった屋敷で、ラナは生けた花瓶を眺め満足そうに息をついた。 「ラナ」 「あ、トウキ君! これ、凄く綺麗だから摘んできたんだよ!」 ニコッと笑うラナに、トウキは綺麗だな、と花を見やる。 が、すぐにラナへと視線を向け、その表情は真剣そのものだった。 「ラナ、話がある」 「うん?」 ラナは首を傾げる。 トウキは、少し苦しそうな顔をして目を伏せた。 「……あの重傷な傷が塞がったのは……俺が、ラナにキスをした時に俺の魔力をラナに注いだからだったんだ。魔人の寿命は、人間と比べればずっと長い。それでラナを助けられた、わけだったけど……。 ラナはもう、人間並みの寿命じゃなくなっちまった」 トウキの寿命も、ラナに移した分減ってはいるが、人間に比べればまだまだ長いもので。 そしてラナも、トウキからもらった分の寿命は普通の人間よりずっと長くなったのだ。 「……ごめん、ラナ」 人間としての人生を、台無しにしてしまった。 人間にとっては、きっと望まない時間。それを、自分のエゴで、押し付けてしまった。 「……トウキ君」 ふとラナの声が降ってくる。 トウキはゆっくりと顔を上げた。
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