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皆の視線を集めるのは、割れた硝子の破片を踏みながら歩く一人の少年。
その少年が向かうは、シロトの元。
シロトより二メートルほど離れた位置で、少年は歩みを止めた。
「何だ、お前は」
不機嫌な表情で、シロトが少年を睨み付けた。
少年はそんなシロトに負けないくらい不機嫌…否、殺気に満ちた表情をシロトに向ける。
「忘れたとは言わせねぇぞシロウ」
「シロウ…?」
ラナは少年から目を放さずにいた。
あの少年は何だろう?
そんなことを思いながら、隣で肩を震わせる主をチラリと横目で見る。
やがて震えるシロトは途切れ途切れに声を漏らし始め。
それは次第に大きくなっていき、
「ふ、ははははははは!!」
腹を抱えて笑い出した。
その様子に少年は顔をしかめる。
「何がおかしい」
「いや、失敬。俺はシロウじゃない。シロウの孫のシロトだ。シロウはとっくに死んでるよ。
今、わかった。
お前は…退魔師シロウに封印された魔人…トウキだな」
少年…トウキはチッと舌打ちしシロトを睨む。
あの野郎死んだのかよ、と呟いて。
その時だ。ふと顔を上げたトウキは、視線の先にいる少女と目が合った。
お互いキョトン、と見つめ合い、やがてトウキが口を開いた。
「…お前、名前は?」
「え、あ…」
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