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大事な弟が
変人になりました
その言葉が心の中で浮かび始め、それと同時に僕の意識は何処か別の所へ飛んでしまった
それからどのくらい夢中で走り続けていただろうか。意識が目覚める頃にはすでに校門前にいて、全速力で走った疲れが一気にのし掛かってきた
何も考えず慌てて来たためか自分の目から分かるほど容姿が凄惨な事となっている。
僕は最低限自分で見える範囲を整え羽佐野高校へと足を踏み入れる。どうせ女の子と話す事なんかないしこれで良いと思っていた。
こんな陰鬱な気分では他人の目を気にする暇もあるまい。
それで今ある問題は十分解決できたと思っていたが、歩いているときでも、トイレで用を足しているときでも、あの光景が頭の中でフラッシュバックされる
(おにいちゃ~ん!)(ねぇお兄ちゃん!)(あ~に~き~!)
(ねぇ兄貴?俺兄貴の事尊敬してるよ)
(兄貴……これ……どうかな)
「うああああああああああああああああああああああああああっっっ」
昔の過去が、素晴らしい思い出が、たった一瞬の出来事によって崩れ去っていく。
思い出とは何故かくのように脆い物なのか。この日僕の心は初めて死んだように感じた。
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