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「先輩、おはようございます」
そんな僕は死んだ魚のようになっているであろう目で声がした方を睨みつけた。
その目には髪が肩まで伸びた明らかに校則違反の少女がご機嫌笑顔でこちらを見つめているのが映った。
「………………………………………」
「おはよーございまーす………お、は、よ、う、0,8,4,0ー」
「…………あ、ああ、おはよう」
この元気のよい精力のある挨拶のおかげで曇りかけた心が静かに甦るのを感じた
もしあと数十秒遅れていたら僕は壊れた「何か」になっていただろう。
心を落ち着けもう一度思い返す。
弟は昔の弟ではないのかもしれない。人は誰でも変わっていく、自分の世界を広げ成長していく。僕は自分の世界を広げる事も出来ずただ昔の弟の姿に固執していただけで僕はあのときから一つも変わっていない。
「どうしたんですか?」
「何でもないよ……」
無意識のうちに突き動かされたのか、僕の身体はいつの間にかその少女と距離を取っていた。
「……………えっと……君は……」
「和歌里語です、昨日はすいませんでした」
何の躊躇いもなく語さんは僕に向かって謝辞の言葉を述べ頭を下げる。
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