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0:序章-03
…知らないうちに寝てしまったようだ。
気付いたらすでに放課後で、古典の教材が机に散乱している。無意識下で動けるのは気絶したときに限られるようだ。
で、机から目を離してみると目の前に語さんがいた。
「…遅ようございます」妙な文に一時迷ったが単なる言葉遊びだと気づき僕は簡単な会釈をした。
「いつからそこに…」
「授業が終わった時ですけど」
猫背になりかかった背中を伸ばし意識を確実に覚醒させる。どのくらい待たせてしまったのかと教室前方にある時計を確認した。15時55分。まだ最後の授業が終わってから数分しか経っていない。何で目の前のこの人物はこうも待ちくたびれた顔をしているのだろう、起こせばいいのに。
「一日千秋と言うように楽しみにしている分待ちくたびれるものです 」
ベガとアルタイルのように、私たちの太陽にもそういったロマンがあるのでしょうか、と語さんは付け足した。
「待ってくれたのは嬉しいけど、何か用があって来てくれたんじゃないんですか」
「…そうです。」
そう言って語さんは僕の机から一歩離れる、そして全速力と言わんばかりにその頭を僕に向かって下げてきた。
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