0:序章-03

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「誤解しないでもらいたいです」 「主にどこを」 「あくまであの答えは本心から出たというものではないんです」 立ち上がり語さんが僕を見下すような構図となる。しかしその視線は本物だ、真っ直ぐと瞳の中心がこちらの瞳を捉えている。 「私はこれでも苦労しているんです、人の気持ちが解らないという事が。己の無知からか無能からか、もしかしたら先天的なものかもしれません。でもそれは人の気持ちを知りたくないという事ではありません。寧ろ逆です。」 何という綺麗で真っ直ぐな目をしているのだろう。 今この子は自分の本心をこの僕に語りかけてくる。それをこんな姿勢で聞くべきものではない、直ぐに姿勢を正しその真剣な眼をこちら側でも合わせた。 「私は自分が解らないまま他人を泣かせたり怒らせてしまうんです。」 瞳に映っている僕の姿が濁る、そして語さんの頬に一筋の涙が流れていった。 「…そうして自分の知らない所で人が離れていくんです。だからお願いです。私を人の心が察せられる人にしてください。」 そう言ってぺこりと頭を稲穂のように下げた。
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