―第2楽章―

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「ねぇ」 仁はつまらなそうに読書をしていた。 文字を追っていた目線を止め、静かに私たちに向けた。 「私たちのこと、分かる?」 「…」 「私だよ。最上由奈(もがみ ゆな)。ユンナって呼び始めたのは仁だったよね?」 「…」 「私は?麻生未来(あそう みくる)。クルミって呼び出したのもあんただったわ」 「…」 仁は何も言わない。 私もクルミも困り果てていた。 「何か言えよ」 しびれを切らした正人が苛立ちを隠しもせずに、低い声で言葉を発した。 そこでようやく仁は発言したが、それは《仁らしい》言葉ではなかった。 「あんたは自己紹介しないわけ?初対面に失礼だと思わねぇの?」 「初対面…だと?」 「ちょっと、まさ…―」 「ユンナ、ちょっと黙ってろ。おい、仁。久しぶりの再会にその態度はねぇだろ」 「再会?覚えてない。お前、誰だよ」 冗談だ。 冗談であってほしいと思った。 質の悪い冗談でもいいから、一言「嘘だよ」と言ってほしかった。 そしたら、蹴り一発で許すのに…そんな言葉は聴こえてこなかった。
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