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放課後、丘の公園。
「ふざけんなっつーの!」
正人は中身を飲み干した空き缶を思い切り蹴って、ゴミ箱にシュートした。
「何だよ、あいつ!あの態度!ムカつく!」
「正人、落ち着いて…」
「ユンナはムカつかねぇのかよ!」
「ムカつくとか、そういう…」
正直複雑な気分だ。
まさか、あんな反応をされると思わなかったものだからショックなのだ。
「ねぇ、二人とも」
半日経って冷静さを取り戻したクルミは悩んだような顔をし、憤慨した正人を無視しながら話し始めた。
「私、ずっと気になってたんだけど、仁は…どうして《覚えてない》って言ったのかな?」
「知るかよ!」
「真面目に聞いて。普通おかしいでしょ?《覚えてない》ってことは《忘れた》ってことでしょ?ということは、昔この町にいた事実を認めてる」
「だったら、何だよ!」
「二人とも、知らないかもしれないわね。あいつ、この町には二年しかいなかったのよ?」
『…は?嘘!』
初耳だ。
物心ついた頃にはずっと一緒にいたのだ。
「知ってるでしょ?あいつ、私の隣の家に住んでたの。だから、これは確実。で、話を戻すけど、二年って結構短いわよね?そのほとんどを私たちと過ごした。この町を思い出せば、普通は私たちを思い出すはず」
「でも、《覚えてない》」
「そこが不自然なのよ」
分からないことばかりだが、確かに不自然だ。
そもそも、《覚えていない》という表現が、私の中でしっくりこないのだ。
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