―第2楽章―

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数分後。 『疲れたー!』 「何回リピートしてんのよ」 クルミは呆れ半分にそう言った。 「感想は?」 正人がクルミに訊いた。 「あんたはピアノが雑すぎるのよ。せっかくのユンナの演奏を壊さないで」 「何だと!?」 「でも、正人って上手いよね!私は正人のピアノ、凄く好きよ!」 フォローのように言ったが本音だ。 すると、正人は真っ赤になって「お…おぅ」と生返事を返した。 「ピアノが好き、なのよ?」 「クルミ…黙ってろよ、そこは」 クルミが悪戯っぽく言い、その言葉に正人は落胆する。 昔はこの風景の中に仁もいた。 けれど今は…。 《覚えてない》 “《約束》さえも?本当に?” 「ユンナ?」 「…え?何?」 「どうしたの?」 さっきまで言い争っていた二人が、心配そうな顔をしている。 いくら親友だからって、こんな顔をさせてはいけない。 「何でもないよ」 なるだけ笑って言ったつもりだが、クルミは私を抱きしめて「大丈夫…また、昔みたいになれるから…」と言った。 《覚えてない》と言われて寂しいのは私だけじゃない。 クルミも、正人だって寂しいに決まっている。
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