―第3楽章―

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不安や不満で、なかなか眠れない夜がとうとう明けてしまった。 家にいても仕方がない。 私は7時になる前に着替えて、登校の準備をした。 母に食事は要らないと言おうとしたが、あまり心配はかけられないため、少しだけ食べた。 というか、少ししか食べられなかったのだ。 食事が喉を通らない。 目玉焼き一つ食べるので精一杯だった。 “熱なんてないはずなのに…” 体調が悪い気がする。 気のせいだと思い込むことにする。 私はバイオリンと鞄を持って、いつも通り学校へ行った。 もちろん楽譜は鞄の中に入れている。 「行ってきます」 「気をつけてね」 少し眠い。 きっと授業中眠ってしまうだろう。 そう思っているうちに、あの公園の前を差し掛かった。 思い出の場所だ。 錆び付いたジャングルジムが寂しそうに佇んでいる。 ブランコは風で揺れるばかり。 《約束だよ…》 昔、仁がそう言った。 “曲を完成させること…それが《約束》…” 確認するように思った。 《見つけてね》 不意に、もう一つ言葉が浮かんだ。 確かに幼い仁の声だった。 “…《見つけてね》…?” 何をかは分からない。
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