―第3楽章―

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「…何か弾こうか?」 重い空気は苦手らしい正人は、しびれを切らして音楽室の楽譜を物色し始めた。 「じゃあ、空気を読んでしっとり系の曲を弾いてよ」 「オッケー」 そう言って彼が選んだのは…―。 「…《悲愴》ね?」 「空気読みすぎ」 「いいだろうが」 「意味考えて弾きなさいよ。《悲愴》って、悲しくていたたましいことじゃないの?」 演奏は止まり、一層空気は重くなってしまった。 仲間が一人いないだけ。 しかも、再会できたがちゃんと再会できていない仲間が一人いない。 ただそれだけで、こんなにも空気が重い。 それだけ仁の存在は大きかった。 遠くでの活躍を聴くだけでも嬉しくなる。 なのに、彼は私たちを忘れてしまっている。 「こんなんじゃあ何もできねぇよ」 「…教室に、帰りましょうか」 「賛成」 どうしたら元に戻るのだろう。 私は音楽を楽しみたい…。 例えそれがめちゃくちゃな曲でも…。
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