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「《覚えてない》って、どういう意味なの?」
「そのままの意味だよ」
面倒臭そうにそう言う態度が気に入らないのか、クルミは一層強く睨んで、「じゃあ、質問を変えるわ」と言った。
「どうして《知らない》と表現しなかったの?忘れている自覚があるのよね?」
「それがどうした。あんたに何の関係があるんだよ」
「大有りよ。聴きたいことはまだあるわ。向こうで成功している仁が、どうして日本に帰ってきたの?家族の転勤なんて理由では納得できないわ」
仁は一つため息をついた。
私たちはひたすら、彼が答えるのを待った。
「約束を守るために帰ってきたんだ」
「誰との?どんな約束?」
「…覚えてない」
私たちには心当たりがあった。
曲を完成させて、それを仁に聞かせることだ。
「本当に、覚えてないの?」
「…あぁ」
「ふざけんなよ!」
突然正人は仁に掴みかかった。
私もクルミも、思わず彼らから離れることしかできなかった。
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