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「何なんだよ!そんな大切なもの、何で忘れられんだよ!」
「正人、止めて…」
「ユンナは黙ってろ!俺はどうしても気に入らねぇんだ!」
正人は仁の襟を掴んで、彼の背中を壁に押し付けた。
それでも、仁は抵抗しない。
指を庇う仕草はするが、それ以外は全く何もしない。
「何なんだよ!こっちはずっと待ってたっつーのに!馬鹿みてぇじゃんか!覚えてないだと?俺らとの約束はその程度だったのかよ!」
「何をやってるの!?」
止めに入ったのは音楽の先生だった。
先生は無理やり二人を引き離したが、正人はそのまま教室を出ていってしまった。
「何があったの?」
「…音楽の表現方法について、論議していただけです。失礼します」
仁はそのまま出ていった。
続いて私たちも、その場を後にした。
教室に帰りながら、クルミは「どうして抵抗しなかったの?」と訊いたが、前を歩く仁は振り向きもしなかった。
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